■広告主に学ぶ企業コミュニケーションの最新事例
「特保サントリー黒烏龍茶の商品開発と広告戦略」セミナー報告
日時:2013年6月11日(火)午後6時00分〜7時30分
場所:SHIBAURA HOUSE(シバウラハウス)・5階バードルーム
講師:サントリー食品インターナショナル 福山 勝実氏
参加者数:40名
6月の経営部会セミナーは、広告主に学ぶ企業コミュニケーションの最新事例として、 「特保サントリー黒烏龍茶の商品開発と広告戦略」という内容のセミナーを実施。
40名の募集人員に対し、全ての席が埋まることとなった。
講師には、黒烏龍茶の商品開発からブランド育成までを一貫してリードしてこられた、サントリー食品インターナショナルの福山勝実氏に消費者との関わり方とコミュニケーション戦略の最新事例をお話しいただいた。
■サントリーの事業ドメイン
大きく分けて酒類・飲料・健康の三つの分野で展開するサントリーの事業ドメインを中心に、黒烏龍茶の商品特性でもあるトクホ(特定保険用食品)についての説明からスタートした。サントリーでは、食品の機能のうち三次機能にあたる生体調節機能に注目し、飲料と健康のクロスする分野において突破口となる商品づくりができないだろうか、というのが開発の起点であった。
【トクホ商品とは?】
・体の調子を整える成分が含まれる
・保険の用途、安全性の検査を受けている
・健康に対する用途が具体的に表示されている
また、サントリーで発売されてきた歴代トクホ商品の紹介も行われた。なかでも、ビタミンCの600倍の抗酸化効果を持つとされるフラバンジェノールを使った「フラバン茶」の開発ストーリーでは、シンポジウム等を開催して情報発信をし、科学的裏付けに基づいた訴求やCM展開をしていったこと等が語られた。
■黒烏龍茶の開発背景
一般的にメタボや肥満が増加するなか、消費者の「おいしい、食べたい・・・だけど気になる脂肪」という悩みを解消したいという発想があった。そこで自前の商品でもあった烏龍茶の油を落とす性質を実験等で再確認した。また、中国福建省の人々に脂肪摂取率が高い割には肥満が少ないという影には、烏龍茶ポリフェノールをよく摂取するとされるという福建パラドックスというサイエンス的裏付けもあった。そこで、科学的根拠を持ちハッキリと効能を訴求できるトクホ烏龍茶の開発に取り組むことになった。
各種データをもとに成分とメカニズムの説明をし、中味については中国国家資格の名誉茶師の称号を得る藤原氏を中心に追及する等、トクホ取得までの道のりは通常の商品開発と比べてとても長い期間を要した。
■ネーミング・デザイン
烏龍茶が含むポリフェノールは烏龍茶の色素成分そのものであり、豊富に含むという意味を込めて「黒烏龍茶」と命名された。また、「黒い食品は健康に良い」「黒は効能の証」という意味合いも持たせた。
デザインにおいてやはり困ったのは、この「黒」という色からくるビジュアルイメージ。多くのデザイン案が作成されたが、社内においては黒ベースのデザインでは「怖い」というイメージがあり、また、パッケージに黒を使うことはこれまでの清涼飲料業界ではタブーとされていた。しかし、商品開発当初から掲げていたトクホの黒烏龍茶という商品に対する強い信念を貫き通し、最終的には黒を全面に押し出したインパクトのある商品パッケージに決定することになった。
■販促展開
競合で花王のヘルシアという商品があり、違いをアピールするためにも「無理せず続けるダイエット」というコンセプトで展開をし、CMにおいては「スリム」をキーワードに、既存の烏龍茶と黒烏龍茶のCMを同時に流して全体訴求をはかった。
トクホの強みは数字や各種データを広告に使えるという点であり、広告のみならず各媒体やセミナー等でもこれら疫学的データを用いた積極的な展開をすることで、商品認知と理解を深めていった。
今やトクホの定番となった黒烏龍茶だが、その生みの親である福山氏の開発秘話は、実に情熱感溢れるセミナーとなった。 何より一番心に響いたのは、ご自身の扱う商品に対し信念を貫き通すその姿勢だ。我々の業界においても同じ事が言えるのではないだろうか。
講義終了後も、限られた時間のなか多くの参加者から質問が出たが、ひとつひとつ丁寧にお答えいただき、非常に充実したセミナーとなった。
またセミナー終了後、福山氏を囲んで懇親会。お礼に黒烏龍茶ならずお酒でおもてなし。