THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告制作協会
NEWS! イベント&セミナー情報
■経営部会セミナー

経営部会セミナーの開催報告
開催日 2014年7月8日(火)18:00〜19:30
会場 3331アーツ千代田
テーマ 「変わる、その先へ。」
〜三越伊勢丹グループの方向性と宣伝戦略〜
講師 株式会社三越伊勢丹ホールディングス 宣伝部長 早川徹氏セミナー
参加者数 経営部会メンバー他、合計100名
7月の経営部会は、宣伝部のキーマンからお話をお聞きするセミナーを開催。
本田技研工業、東芝、トヨタ、サントリーに引きつづき、5回目となる今回は、売上でも広告でも日本の百貨店のトップに君臨する「三越伊勢丹」。執行役員・宣伝部長である早川徹さんが今年のテーマに掲げるのは、『突き抜けるクリエイティブ』。
現場のトップである早川さんに、三越伊勢丹がめざす方向とそのための宣伝戦略を語っていただいた。
120名を超えるエントリーがあったため、会場は大人数でも収容できる3331アーツ千代田での開催となった。

■ISETAN−TAN−TAN

早川氏のセミナーは三越伊勢丹のオフィシャルPVでもある「ISETAN−TAN−TAN」の紹介からはじまった。社員が総出演したこのPVはYou tubeにアップされ、これまでにすでに50万PVを超える視聴を獲得し大成功となった。かける宣伝費はそれほどない中、TVCMはとても無理だがYou tubeであればタダで展開できるとあって、今回のPV制作となったとのこと。ちなみに宣伝部長として早川氏が注文したことは2つ。
「プロのダンスをみせること」「カメラは固定せず動き続けること」
この条件だけを提示し、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」のそれとは異なる、社員が出演するオリジナルPVとなった。これも三越伊勢丹が掲げる「イノベーションの精神」からくるもので、常に新しいことにトライすること、それこそがコミュニケーションデザインであるという考え方が根底にある。

■百貨店を取り巻く環境

三越伊勢丹グループは2014年3月期の連結業績は売上高で1兆3,215億円を超え、前年比は106.9%となった。リモデルと消費増税前需要により、+851億円の増収、4期連続の増益で過去最高益を大幅に更新した。また他百貨店と違い、収益の柱は金融業や不動産業ではなく本来の百貨店業であり、そこでの売上増が増益へとつながった。
しかし百貨店の規模は年々縮小され、98年に9.1兆あった売上が12年時には6.1兆へと減少し現在も変わらない状況である。一方でEC・通販の売上は急増しており、07年に4.5兆だったものが12年時には10兆へと倍増しているのが現状である。

■百貨店の根本課題

これまでは商品を仕入れ、それを販売し利益を得、売れなければメーカーへ返品するというリスクを負わない経営体質があった。しかしこのままでは構造的な不況業態であり、抜本的イノベーションなくして復活はないため、イノベーションにより顧客の新たしい価値を創造する必要があった。
ユニクロをはじめとするSPAは卸の部分を省いているため、ほぼ同じ製品でもこのままでは競合に勝つことはできない。しかし自らリスクを持ってSCMを改革し、川上へと参入することで独自性やオリジナリティにつながっていくはずだという方向へと変化していった。

■販売生産性の向上

三越伊勢丹では販売員をスタイリストと呼ぶ。このスタイリストの成長こそが顧客満足度の向上につながり、ひいては売上拡大になるという考え方を導入した。具体的な取り組み事例としては、モチベーションアップのための優秀者表彰、販売員の質の可視化をするための接客技術の科学的検証、働く環境改善のための営業条件の見直し、等々をおこなった。ちなみに販売ツールに関しても同様の考え方を持ち、商品紹介ツールはチラシとは呼ばずに「ガイド」と呼び、これを怠ると罰金100円が課される。

■「これからの百貨店」宣言

2013年度の三越伊勢丹年間企業広告のテーマは「問いつづける。変わりつづける。」 というもの。そして「これからの百貨店」宣言として下記5つを定めた。
  1. こころ動かす「おもてなし」を。
  2. いつも豊富な品揃えでお迎えする。
  3. 「すてき!」「便利!」をお買い上げいただく。
  4. 生まれ、育まれた、誇りある日本と。
  5. この星と、未来へ。

■52週のマーチャンダイジングの課題

これまでは日本の四季と百貨店顧客ニーズに合わせたシーズン商品を52週に分けて展開していた。しかし現実には夏の最盛期の前にはすでにクリアランスセールが始まるなど、季節感を無視した展開となっていたため、これらを百貨店のあるべき姿に戻そうという動きになった。ちなみに営業終了時間を早め休日を作ったのは従業員(スタイリスト)のためであり、それはしいてはお客様に笑顔で接するためという考えからである。

■事業拡大

今後は顧客接点(販売チャネル)の拡大をすべく、これまで既存大型店を中心にしていた販売形態から、アウトレットや駅ビル、空港やサテライトといった顧客がいる色々な場所にも展開をしていくことになる。
また百貨店のEC売上高が拡大しており、13年度計画では90億円だが早川氏自身としては200億程度をひとつの目標としているが、現状宣伝部は介入していない。中期目標としてはWEB事業で400億〜500億の達成を見込んでいる。
海外事業においても同様で、とくに消費が拡大している中国・東南アジア市場での開拓を図り、中期目標として1,000億円規模を、営業利益30〜40億円の達成を見込む。

■2014年年間企業広告

2013年の「問いつづける。変りつづける。」から、2014年は「変わる、その先へ。」として展開している。キーメッセージは以下2点。
  • 毎日、かつてない百貨店になる。
  • その覚悟はあるか、三越伊勢丹。

■キャンペーンにおける宣伝戦略

最後に三越伊勢丹宣伝部のキャンペーン(企画~実施)の流れについて説明があった。
  1. アートディレクション発信
  2. クリエイティブ会議
  3. アートディレクション会議
  4. 本部MT他答申
  5. 各社様への発信・データ送付
というのが主だった流れある。
早川氏としては、コンペは信用をなくすのでしたくないとのこと。また、業者に丸投げするのを嫌っており、自分達のやりたいことは決まっているはずだから、それをインプットすることがとても大事である。できるかぎりお願いしたいと思うクリエイターを名指しでオーダーしたいと考えている。
また、新聞やDM、ポスターやWeb等様々な媒体やツールを使って宣伝展開をしていくにあたり、中心にあるべきクリエイターは常に一人でなければならない。顧客視点から見たらあくまでひとつのキャンペーンであり、総合的にみてキャンペーンを訴求することが大事なのである。

■伝統と革新

4月1日に三越のショッピングバッグが変わった。人間国宝である友禅作家の森口邦彦氏がデザインしたショッピングバッグである。これまでの包装紙「華ひらく」で包んで新ショッピングバッグ「実り」に入れることで、お客さまと三越がともに繁栄しつづけていくことを意味している。
これはまさに341年続いた三越の伝統であり、革新である。原点を見つめ直し、常に新しい提案を続けていくという強い意志のあらわれなのである。
未来へ向けた三越伊勢丹の想いを一気に熱く語っていただいた充実したセミナーとなった。最後に話された「一緒に仕事ができて楽しかったと言ってもらえると嬉しい」「我々と一緒の土俵に立ってもらえると嬉しい」といった言葉は、クリエイティブに携わる人間にとってもこの上ない嬉しい言葉だったのではないだろうか。

以上で早川氏のセミナーは終了した。
■アンケート集計
  1. 本日のセミナーの内容はいかがでしたか?
  2. 三越伊勢丹のめざすコミュニケーション戦略について理解できましたか?
  3. 三越伊勢丹のめざすコミュニケーション戦略について理解できましたか?
  4. ご自身の職業(職種)についてお聞かせください。
  5. 今後、セミナーで聞いてみたい講師がいればお書きください。
    • 古庄元海上自衛隊幕僚長(現在はNTTデータ通信顧問)
    • ビール会社の方に同様のお話を聞いてみたいと思います。
    • ユニクロの柳井社長orソフトバンクの孫社長、もしくは両社の宣伝部長
    • 中村勇吾氏
    • 京井良彦氏
    • モトックス社長
    • GOEN 森本千絵さん
    • 北川一成
    • シンガタ佐々木さんはぜひ開いてみたい。
    • 今回のようなクライアントの側の方の考え・方針
    • 横山隆治氏(デジタルインテリジェンス)
    • 原研也氏
  6. 今後、セミナーで聞いてみたいテーマがあればお書きください。
    • 広告制作会社としての経営改革の視点をどう見て行けば良いのか?
    • 広告の今後について各企業の方が考えている課題を伺ってみたいです。
    • これからの広告のカタチ、または最新の広告のカタチ
    • これからの百貨店の展望
    • オンライン動画
    • ワーキングライフバランスについて。 心の病の解決について。
    • 2020年東京オリンピックコミュニケーションデザインについて。
    • デザイン会社の業務領域拡大をどうやったら良いか。
    • 今回のような流通系CR
    • ディレクションの重要性
    • 流通のこれからを聞いてみたいので、またおねがいします。
    • アートディレクション
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