THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告制作協会
NEWS! イベント&セミナー情報
■経営部会セミナー

経営部会セミナーの開催報告
〜広告キャンペーン企画の奥義を学ぶ。〜
「いまクリエーティブの最前線で起きていること」
開催日 2014年9月9日(火)18:00〜19:30(延長となり20:30終了)
会場 (株)Too
講師 「シンガタ」クリエーティブディレクター佐々木宏氏
参加者数 セミナー参加者 91 名
コミュニケーション・デザインの時代となっても、やはり広告は事件であってほしい。
クリエーティブは、社会を動かす力であってほしい。
どんな時代になろうとも、こぢんまりせず、堂々たる大仕掛けのキャンペーンで日本を沸かせつづけるクリエーティブディレクター、佐々木宏さん。
何十年も全力でトップを走りつづける佐々木宏さんに、いまクリエーティブの最前線で起きていること、これからの時代にクリエーターに求められることなど、じっくりとお話しいただきました。

なお今回はセミナー申し込みが多く、すぐ定員に達したためお断りした方が二十数名おりました。ここにお詫び申し上げます。

■佐々木氏自己紹介

冒頭、佐々木氏よりご自身のキャリアをお話しいただきました。 1977年、22歳で電通に入社。新聞雑誌局に配属となり、そこで多くのことを学んだのち6年後の28歳で念願のクリエーティブ局に転局。コピーライター、クリエーティブディレクター、クリエーティブ局長職を務められました。2003年に電通を退社後「シンガタ」を設立し、今日にいたるまで多くのクリエイティブ・プロモーションに関わり、現在は映像を中心とした業務が多い毎日。 続いて、佐々木氏がこれまで担当された事例について、映像を交えながらその制作経緯やこだわり等をお話しいただきました。

■スタンドバイミー・ドラえもん

8月8日に公開されたドラえもんのCG映画のプロモーションを担当したが、かなり少ない予算の中で、やるならちょっと変わったことをしようということになった。通常、完成後の試写会に芸能人を呼んでコメントをもらうということはよくやるのだが、今回はあえて未完成試写会という形で実施、それを大人で影響力のある有名人に見てもらった。トヨタの豊田社長や黒柳徹子、秋元康、等々。
コピーライターの児島玲子氏にコピーを依頼し、「全ての子ども経験者の皆さまへ」というコピーでポスター制作等を展開、テーマは「泣けるドラえもん」。これが例年では30億程の売上であったが65億を超える大ヒットとなった。自分がやった最近の仕事では一番面白い仕事であった。

■一乗谷DISCOVERY PROJECT

はじめは一乗谷という町を宣伝するだけのB全4枚の仕事であった。正直受けるかどうか迷ったが、「一乗谷」という名前の良さにひかれて取り組むことになった。予算もないので、印刷せずに刷り出しのものを40枚、六本木にエスカレーターに貼ろうという提案を行い実施することになったが、これが大変良かった。その後、この一乗谷とソフトバンクのお父さん犬、ジョージアの宇宙人ジョーンズ等、他の商材と組み合わせて何度もコラボレーション企画を展開することになった。
面倒くさがりのところもあるので、常に今手がけているものとコラボしたりタイアップをできないかと考えている。しかしそうすることで結果として相乗効果で話題となり、宣伝効果が高まったり良い波及効果をもたらしたりすることが多い。広告業界としては、そういうこともやっていかなくてはならない。ただ、自分自身としては、自分とその周辺が幸せであることが大事だとのこと。

■TOYOTOWN

電通時代にトヨタの仕事をやっていたことがあるが、当時を振り返ると大変な仕事が多く、もうトヨタと関わることはないだろうと思っていたが、久しぶりにやることになってしまった。
トヨタは様々な車種が溢れかえっている状態で、それを何らかの形で結びつけたかった。そこでバラバラな車種のストーリーをひとつの街で起こった出来事として作り上げようと思ったのがTOYOTOWNである。米国TVドラマ「デスパレードな妻達」に登場する撮影場所を見てこの発想を思いつき、街を舞台とした。
多くの登場人物はそれぞれ著名な有名人ばかりだが、もともと各車種で起用していた人たちを使っただけで、新たに起用したのは堺雅人、満島ひかり、樹木希林くらいである。

■サントリーCM

3・11東北大震災の翌日、資生堂のCM撮影が予定されており、どうにも変更できなかったのでそのまま撮影を実施した。キャスティングされていた松田聖子と話していた時に彼女の口から出た「こういう時こそ有名人が何かしなきゃいけない」と言った言葉が頭に残った。
当時はあらゆるCMが規制されACや一部のCMのみで、一般企業のCMはほとんどが中止になってしまっていた。そこで、サントリーシルキーブラックのCMで使う予定だった「見上げてごらん夜空の星を」を、CMが中止になった有名人に歌ってもらおうという企画を立ち上げた。もちろん様々な事情で難しい状況であったが、こういう時こそ代理店も一つになろうということで、電通、読広、博報堂などが連携して、総勢71組の有名人によるコーラスのCMが完成した。ちなみにこの折、佐々木氏は一人ひとりに手紙を書き、「一つのCMに集約したい」と訴えサントリー関連の出演者72組中71組に登場してもらうことになった。
何もやらないよりいい、被災地に対してというより他の人に聞かせてやりたいという気持ちがあり、企業も何か行動を起こすべきだと考えていた。

■TOYOTA FUN TO DRIVE AGAIN

サントリーのCMが流れた後に、トヨタの豊田社長から直接連絡があり、トヨタもサントリーのように何かやりたいと共鳴があった。それでは、トヨタは車メーカーだから東北の道を走ろう。ならば有名人、キムタクとタケシ。東北の各所を織田信長に扮したキムタクと豊臣秀吉に扮したタケシが車で回る。
このCMを手掛けた際、豊田社長に対して「トヨタが広告を頑張らないと広告業界もつぶれてしまう」と直談判し、意気投合。このFUN TO DRIVE AGAINのキャンペーンは継続していくことになった。

他にもピンククラウンの誕生秘話やソフトバンク一乗谷のコラボ等、数多くのヒットCMの裏側と制作について語っていただいた。また、最後にはこう述べられた。

『これまでどんな小さな仕事も大事にやってきた。1案でいいと言われているのに10案を考えて出した。一見無駄だったかもしれないが、いいものが残る確率は上がったと思う。また、そういうときには必ず周りの誰かがみてくれていてチャンスをもらったり後押ししてもらってきた。そして何よりも、仕事を面白がろうとした。「これぐらいつまらない仕事も珍しい」という仕事こそ、180度ガラッと変えて提案をしてみる。外してしまうことも多いが、中にはヒットにつながることもある。そして、クライアントの悪口は絶対に言わない。開き直り、周りのせいにせず、いかに条件が悪かろうとも、どんなこともプラスに転じるという考え方でやってきた。その方が幸せになれるのではないだろうか。』
まさに広告業界のトップランナーの生の熱いトークに、終了時間を1時間近くオーバーしたものの、参加者も思わず熱くなるあっという間の時間でした。
また声の調子が思わしくない中、それさえも話のネタにするなど、終始ユーモアに富んで参加者を惹きつける講義に、終了時には万雷の拍手が沸き起こりました。

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