THE ORGANIZATION OF ADVERTISING CREATION
OAC 社団法人 日本広告制作協会
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■経営部会セミナー

「広告制作と知的財産権」〜著作権を中心に〜
講師 ライツ法律特許事務所 弁護士・弁理士 伊藤真氏
開催日 2016年5月10日(火)18時〜19時30分
会場 セットインターナショナル会議室
参加者数 経営部会含め43名
5月の経営部会は、五輪エンブレムでも話題となった知的財産権について、知的財産権の専門家であるライツ法律特許事務所の伊藤真氏をお招きして、お話をお聞きした。

知的財産権のいろいろ

知的財産権には以下のものがあります。

特許権: 発明(アイディア)の保護のためのもので、出願し、審査を経て登録される。
先願主義。特許権者は、特許発明の実施をする権利を専有する。
出願から20年間有効。類似の権利として実用新案権がある。
意匠権: 工業デザインの保護のための権利。
商標権: 商標(マーク)の保護のための権利。更新により権利を維持し続けることができ、類似する商標を類似する商品・サービスに使用することを差し止めることができる。
「商標の使用」には、包装への使用、頒布品、広告などへの使用が含まれる。(BOSSジャン事件のように、一時的なキャンペーン企画商品でも問題となりうる。)
商品名や商品の写真を用いること自体は、侵害にはならない。
普通名称化する使用については、問題視されることも多い(ウォシュレット、スタ丼等)
商標については、特許情報プラットフォームで簡易調査が可能です。
商標登録や意匠登録をしていなくとも、有名な商品やその形態等は、不正競争防止法によって保護されることもあります。
著作権: 著作物に関する著作者の権利保護のためのもの。文芸、学術、美術、音楽等。保護期間は、著作者の死後 50年、団体名義などでは、公表後 50年。
真似をしていなければ、それぞれが別個の著作物として保護されます。
パブリシティ権(肖像権): 人の顧客吸引力の商業的価値の保護
(人の氏名,肖像等を無断で使用する行為を禁ずるもの)。
プライバシー権: 個人の私生活の保護。

そのほか、不当景品類及び不当表示防止法も知的財産権の保護に適用されることがあります。

著作権について

それではみなさんの仕事に最も関係する、著作権について説明します。

○ 著作権が認められるものは?
文芸、学術、美術、音楽等が対象となります。キャッチフレーズ、標語は対象となりません。ロゴも雑誌 popyeのロゴ、Asahiのロゴは認められませんでした。写真については、立体物を写した場合には、素人写真でも著作権が認められました。
(絵画等の複写は認められませんでした。)
○ 権利は誰に帰属しているか?
権利は原則、制作者にある。ただし、会社の仕事として制作した場合、著作権は会社に帰属する。また、製作委嘱の場合、権利譲渡か包括的な使用許諾か不明確な場合も多い。権利譲渡がなされたことを証明しなければならない。
(例えば、礼状を出して、文書を残す等。)
映画は特殊であり、著作権は映画製作者に帰属する。CM映画の映画製作者は広告主とした判決もある。
○ 権利を侵害するのはどんな場合か?
真似をしていなければ、別個の著作物として権利は保護される。
改変する場合には、必ず、著作者の了解を得る必要がある。(トリミングも、文字乗せも、改変に該当する。)
写真から絵を描く場合でも、写真の著作権侵害になることがある。
アイディアや作風自体は著作物ではないので、単にアイディアや作風が似ているだけでは、著作権侵害にはならない。
○ 許諾の有無(許諾範囲内の使用か)
著作物の利用に関しては、書面による契約を交わさない場合も、メール等を活用して記録に残すべき。特に許諾の範囲(どのような利用についてまで許諾していたか)について不明確な場合が少なくない。
○ 著作権の制限規定(著作権の対象とならないもの)
付随対象著作物の利用(写り込み):写真の撮影、録音又は録画において、撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は著作権の対象とならない。
→例えば、写り込んでしまった建物や美術品、人物について、著作権や肖像権の対象とならない。(意図的に写し込んでいると判断された場合はだめ。また人物については、肖像権の侵害とならなくてもプライバシー権の侵害となる可能性はある。)
→この規定については、参加者から質問が集まった。
TDRのアトラクションや横浜の建物等、業界内でも写り込みは NGとされるものも多いが?
TDRは映画の著作権で写り込みを権利侵害としていると聞いたことがあります。
横浜の建物は不明ですが。法律的には勝てるとしても、クレームをつけられること自体を嫌うクライアントも多いと思います。あそこはうるさいぞという風説が立つことで、写り込み自体を阻止しているのかもしれません。

以降、具体的事例をもとに、お話をお聞きしました。
旧東京オリンピックエンブレムは、著作権侵害だったのか?法曹界内での見解。
写真を参考に製作したイラストの判例等、興味深い話は、そのまま懇親会の場まで続きました。

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