俯瞰して考えるコロナと経営

  • 開催日時2020年12月8日(火)11時〜12時
  • 場所ZOOM
  • 講師鈴木清文氏(前OAC理事長)
  • 参加者数17名
  • 近藤委員長
    2020年の経営委員会では、コロナと経営に関する意見交換を通して過ごしてきましたが、本日は前OAC理事長で、日本デザインセンター(これ以降NDCと表記)の経営に長年携わっておられた鈴木さんをお招きし、お話を伺ってまいります。

  • 鈴木清文氏
    今回のコロナで、やんちゃな私も静かに暮らしています。観なかったTVも観るようになり、また運動不足になってはいけないと1日5千歩を目標に散歩もしています。ついでに、テニスで足の筋肉を傷めたり、肋骨を打ったりと、いろいろやらかしています。皆さんが、経営に必死で取り組んでいる中、のんびりしている私に何か話せ、最後は明るく締めくくれと注文が入っていますがお付き合いください。

  • あなたは、どちらのタイプの経営者?

    A. 合理的に社員を切ってでも会社を存続させる

    B. 社員は切らずに(しかし給与は半分にして)みんなで会社を存続させる

  • と、まずは鈴木さんからの問いかけです。それに対し、事務局に集まった経営委員会メンバーは・・・(以下、〇印は事務局並びにZOOM参加者の声)

  • ○給与を下げて社員が耐えられるのか、一緒に耐えてもらえるのか悩ましい。また一方で、私はオーナー社長ではなく、歴代の方々が築きあげてきた会社でもあるので、社員を切ってでも存続させたいという気持ちもある。とにかく、これからは体力勝負だと思う。

  • ○人情派社長としてはBを選択したい。でも、どうしようもなくなったら、古手の社員と新人だけ残し、教育を施しつつ、新たなことにチャレンジできるようにして、生き残りをかける。

  • 鈴木清文氏
    皆さんはどちらのタイプの経営者になるか。考え方を社員の方と共有した方が良い。先ほどの質問でAタイプなら、解雇するにもムチ打って辞めさせた人は戻ってくるはずもないが、『失業保険をもらって耐えてくれ。回復したら必ず戻す』という方法もある。また、Bタイプなら経営者のあなた自身も『私も給与を半分にする』など、社員の理解に努めるためにも、明確に考え方を伝えていくべきだと思う。

  • キャッシュフローが大事

  • 会社の存続にはキャッシュフローが大事。借りられるものは借りて、手元資金があれば生き残れる。このコロナも収束したら、経済も回復していくと思う。最後まで耐えた人が生き残れる。それを頭に入れて手を打っていくべき。

  • コロナ以前の問題として、今までのやり方が問われる

  • 近藤委員長
    グラフィックの仕事が減り、デジタル系の仕事が増えている現状にあり、グラフィック系としては困っている。

  • 鈴木清文氏
    NDCも動画等にも進出するまで、15年くらい掛かった。以前から手を打ってきたところとの差はどうしようもない。今まで出来ていなかったところは、これから教育していくべきだし、会社としてその方向に進出すると決めたなら、それが出来ない人には去ってもらうなど、そこはまた生き残るために考えていくべきだと思う。

  • ○年配者でもデジタル系にシフトしてもらうよう、会社から要請を出してその達成度で賞与に差をつけるなどしている。

  • コロナは評価制度を見直すチャンス

  • 鈴木清文氏
    今、評価の話が出たが、会社の年配社員がイキイキ楽しそうに仕事をしていない会社は、存続という観点から見ると長くは続かない気がする。確かに、歳を取って明らかに以前より能力が低くなった社員の給与を下げるなども今後は必要かもしれない。逆にシニア層が出来る仕事にも目を向けることも必要。

  • アメリカの例では、景気が悪くなったときは、この人が1番目、この人が2番目など解雇する順番を決めて、それさえも社員と共有している話もある。日本ではそこまでは行かずとも、経営者の姿勢、考え方を旗幟鮮明にし、社員全体をまとめられるかが今後のカギだとは思う。

  • また、給与と賞与の考え方だが
    給与=その人の能力に対して支払う
    賞与=当期の仕事・業務への貢献に対して支払う

    100%明確に区分けは出来ないかもしれないが、会社としてこうあって欲しいというメッセージを出し、それにどれだけ貢献してもらえたかなどの尺度を考えておくべきだと思う。

  • 時間管理と見える化

  • 鈴木清文氏
    (副業について問われ)会社がその人の仕事を把握できているのであれば、それもありだとは思う。但し、これはまたアメリカの例だが、仕事に目標時間を設定し例えば8時間でやってほしいところを10時間掛かるようなら、それは評価が下がる。会社での仕事を時間内で出来る人、またそのような仕組みを持っている会社ならそれもOKだとは思う。

    また、時間管理のことでいくと、アニメ(デジタル系)の制作現場の話だが、アニメーターのマネージメントを一人の人が受け持ち、あるアニメーターの目標業務が終わったらすぐ違う仕事を提供。または休ませるなど、分単位で管理しているという話も聞いたことがある。社員の業務管理などの観点から言えば、リポート(日報など)は直属の上司だけではなく、指導的な役割の者が共有するなど出来れば、役に立つとは思う。

  • ○当社では、日報などリポートの提出、また仕事は目標時間を設定し割り振り、デザイナーは毎日ZOOMでのミーティングなどで出来るだけ見える化に努めている。

  • ※事務局補足企画業務、作業業務など制作現場での業務内容も広いが、それぞれのスキルアップ次第で効率は良くなる。そのための教育などは必要。現在は仕事量が少ないとの声があるが、逆に今からトライしてみて現状を認識し、次に向かう手を打っておくことも必要かもしれない。またそれぞれの役職に応じ、変化に対応するための知識や技術の習得に努めておくべきかもしれない。

  • 在宅勤務について

  • 鈴木清文氏
    子どもが出来て育休を取るのは良いじゃないかと、かなり前だがNDCで提案したらおじさん連中から反対の声があがった。今でこそ、ママさんが育休をとってから戻る仕組みを整え、ママさんだからこそ取り組める仕事にもチャレンジしているが、当初は大変だった。今は在宅勤務が多いと思いますが、うまくいっていますか?

  • ○ 在宅でも出来ることは、やってみてわかった。

  • ○仕事量が減っているから出来ているのか、仕事量が増えたらどうなのかはわからないが、出来ているのは事実。なお、当社の場合打合せは出社で、あとは在宅でも良いとしている。また、ZOOM等のオンラインは、今までのワイワイ面と向かって話し合っている時より、時間が掛かっている印象はある。逆に言うと、今回のコロナ禍での在宅を経て、雑談の大事さもわかってきた。

  • ○コロナとは全く関係ない病で入院した社員がいたが、在宅期間中にそうなったので復帰しても自宅で仕事が出来る環境になっていたことは、好都合だったかもしれない。また社員同士のコミュニケーションも、ZOOMやSlack等の環境をつくってきたので、あとは慣れだと思う。

  • 鈴木清文氏
    さて、コロナが収束したとしてクライアントもリモートでなくなったとしたら、どう対応するか。リモートでも出来ると判断したなら、経営者として『当社はリモートで行きます』と、宣言することも可能。これも社員の声を共有しつつ、経営者としての姿勢が問われることになると思う。

  • ○現在はクライアントも基本リモート。なかなかすぐには元に戻れないという前提でいる。

  • ○回復後もしばらくはこの状態は続きそうだが、お客様次第のところがあるのは事実。

  • ○このような状態が続いた場合、既に聞こえてきているのはクライアント内での内製化にて(広告会社も売上減・直クライアントでも中にはその傾向あり)こちらに仕事が回りにくい環境があり、これは別の意味で心配。

  • ○直クライアントでも今までの宣伝部発注から各事業部からの発注にて、商品企画などのお手伝いなど変化が出ている。また、その中でもデジタル系を望む声は高い。

  • 鈴木清文氏
    クリエイティブと広告会社の持っている機能を合わせ持つことが、今後の制作会社にも求められてくるかもしれない。

  • 近藤委員長
    IKEAが70年の歴史を持つカタログを廃止※1、今後のクリエイティブに関してはどのようにお考えですか?

  • ※1【12月8日AFP】スウェーデンの家具大手イケア(IKEA)は7日、人気を博していた年刊商品カタログを廃刊する方針を明らかにした。利用客のデジタル移行に対応するため、70年の伝統に終止符を打つ。同社の家具に囲まれた暮らしを紹介するカタログは大きな人気を集め、全世界の発行部数はピーク時の2016年には32か国語で2億部に到達。印刷部数は聖書やイスラム教の聖典コーラン、ファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズと比較されるほどだった。しか し同社は、オンラインショッピングの利用が増加し、印刷されたカタログを読む人が少なくなったことを受け、「成功を収めてきたイケアカタログを終了する決断」を下したと説明。AFPの取材に応じたインター・イケア・システムズのマネジングディレクター、コンラート・グリュース氏は、カタログの廃刊は「感慨深いが、非常に合理的な決定だ」と説明。利用客の行動は大きく変化し、「ウェブ、アプリ、ソーシャルメディア上での交流」も選ぶようになっていると指摘した。

  • 鈴木清文氏
    クリエイティブの仕事は、人間力そのもので変わってくる。デザインの領域ではAIに取って代わる部分も出てくるかもしれないが、最終的には人間力・クリエイティブ力は残る。人を動かすチカラのあるものは残っていく。その人を動かすチカラを養うには、様々なコミュニケーションを図り、アイデアとして変えなければいけないと思ったら、すぐ変える即応力や柔軟性も必要。トライ&エラーを繰り返し、チカラにしていくことが必要だと思う。

  • 近藤委員長
    では、お時間となりましたので最後に皆さんに一言お願いします。

  • 鈴木清文氏
    明けない夜はない!二年後くらいに、また今日のメンバーで「あの頃はきつかった」という話をしたいですね。また、コロナに関していうと今後ワクチンも開発されて出回るかもしれませんが、安全性の裏付けはどうかなど、よく見極めたうえでの接種を念頭に置いて欲しい。そう考えると、一年くらいはまだまだキツイと思って、それに向けて備えてほしい。

  • 近藤委員長
    ありがとうございます。鈴木さんからは、「生きろ!生き続けろ!」と言われたような気がします。本日はありがとうございました。

  • 以上で、本日の委員会は終了した。